リリックスピーカーは、
どのように生まれたのか?

音楽を聴く環境は、ここ数年で大きく様変わりしている。数年前までは、CDやレコードといったパッケージで多くの人は音楽を聴いていたが、現在では、音楽ストリーミングサービスで聴くのが主流となってきている。

しかし、音楽ストリーミングサービスは、数千万曲を楽しめるというメリットがある一方、CDやレコードの時代にスピーカーの前で歌詞カードを広げ、アーティストの言葉を一言一言、噛み締めて味わうような、そんな濃厚な音楽体験が希薄になったのではないか?と開発チームの斉藤迅たちは感じた。

「ただ音楽をたくさん聴きたいわけじゃない。一曲だけでもいいから、深くじっくりと音楽に心を震わせたいんだ」。そんな想いで音楽の本質について考えをめぐらせていたとき、斉藤にとっていままで人生でもっとも濃厚だった音楽体験を思い出した。

着想の原点となった、
歌詞に人生の背中を押された体験

それは、斉藤の大学浪人生時代の音楽体験だった。北海道から右も左もわからないまま入学した東京の予備校は、牢獄予備校と生徒たちが密かに呼ばれる独房のような部屋で24時間寮監に監視されながら勉強し続けるという、今の時代には考えられないスパルタ式の一風変わった予備校だった。
その特異な生活に面食らった斉藤だったが、しかし、彼の気持ちを強く持たせてくれたのは、あるパンクバンドの一片の歌詞だった。彼は、CDウォークマンと歌詞カードを、寮監の目を盗んで聴くことで、その言葉に励まされ、過酷な毎日に立ち向かっていく気持ちをもったのだった。

音楽には、BGMとして楽しむなど様々な楽しみ方があるが、斉藤にとっては「歌詞が心を支えて人生の背中を押してくれる」、そんな音楽との向き合い方は、音楽の根源的な魅力だと考えるようになった。

Lyric Speakerの初代モデル

そんな斎藤の想いを軸としながら、「アーティストの紡いだ言葉の魅力を、余すところなく味わう」というコンセプトを追求した開発チーム。その中で、彼らは、アーティストの言葉が塊として、空中を浮遊し、スピーカーからダイレクトに伝わってくる、そんなアーティストの「言霊」を味わうという透過型スピーカー「Lyric Speaker」というコンセプトにたどり着いた。

Lyric Speakerは、「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)・インタラクティブ・フェスティバル」にて、アジア初のBest Bootstrap Companyを受賞したことで注目を集め、全世界32ヶ国で発売。
透過型の初代モデルは、そのコンセプチャルなビジュアルから、非常に多くのリスナーに愛された反面、税込32万4000円という、高価格なものでもあった。また、日本国内の工場で手作りでの生産となったため、出荷台数も限定され、2019年に惜しまれつつ終売した。

歌詞と共に暮らす
Lyric Speaker Canvas

一方、初代モデルを発売する中で、ユーザーから聞こえてきた「より部屋に置きやすい形で楽しみたい」という声から、開発チームは、どのような形が一番部屋に美しく馴染むのかについて研究した。その中で、たくさんの人々が、自宅に自分が愛する絵や言葉を飾っていることを発見した。そこで、「アーティストの言葉を飾る」というコンセプトで、リリックスピーカー・キャンバスが制作され、2018年より発売開始。

世界へ広がっていく「COTODAMA」

そして、リリックスピーカーは、アビー・ロード・レッドへの選出、SAINT LAURENTとのコラボレーションなど、世界中の音楽ファンに愛される製品として成長を続けている。また、Amazarashi、Indigo La Endとのコラボレーションによるライブでの活用、Pioneer DJとのコラボレーションによるDJシーンでの活用など、様々な音楽体験へと広がっていっている。日本発の世界的音楽テクノロジーを目指し、COTODAMAはこれからも進んでいく。

斉藤迅 Message

僕の場合、予備校時代に味わったあるパンクバンドの歌詞が、人生を前に進めさせてくれました。きっと、誰にも、そんな自分の指針となるような一曲はあるはずです。
その言葉と向き合う中で、何かに気づいたり、気持ちを高ぶらせる。そんな歌詞と自分との濃厚な時間を味わってほしくって、リリックスピーカーを作りました。
ぜひ、あなたの大切な一曲と向き合う時間を、堪能してみてもらえたらと思います。

斉藤迅 Profile

OK GoのMV「Obsession」、ロボットバンド「Z-Machines」など音楽とテクノロジーを軸に様々なクリエイティブを手がける。受賞歴にカンヌライオンズ金賞などがある。